ことばを紡ぐ

翻訳中に出逢ったことばたちについての覚え書き的なもの

本日の「へぇ〜」な英語表現

料理の作り方の早送り動画を見ていて出会った「へぇ〜」な表現

 

Boil until fork tender: フォークで潰せるくらいやわらかくなるまで茹でる

Fry until golden:  きつね色になるまで焼く(炒める)

教科書で勉強しているだけでは、こういう表現は出てこないなぁ。やっぱり毎日大量に英語に触れなければ!

 

 

inclusion

inclusion

辞書的な訳は「含有、包含、中に含むこと・含まれること、含有物」など。

 

福祉の世界では、social inclusionという用語がよく使われ、「社会的包摂」が定訳。

 

教育の世界では、inclusive educationという用語がよく使われ、そのままカタカナで「インクルーシブ教育」などと訳す。

 

ビジネスの世界では、diversityとともに使われることが多い。diversityは「多様性」という定訳があるけれど、ネットで検索した限り、ビジネスの世界のinclusionにはまだ定訳がないような感じ。exclusion「排除」に対して「反排除(主義)」とか「受容性」などと訳されている。

 

今、やっている企業のウェブサイトの和訳では、diversity and inclusionをカタカナで「インクルージョンダイバーシティ」とし(現行サイトでもそうなっていたので)、その後ろにカッコ書きで(多様性の尊重とその受容)という説明的な訳をつけてみた。

 

【追記】記事を公開したら「インクルージョン」という単語にリンクが貼られていて、リンク先を見てみたらインクルージョンの新しい意味を見つけた。「水晶などが結晶する際に、入り込む内包物」のことをインクルージョンというらしい。ことばっておもしろい!

未知の分野の翻訳にかかる時間

これまでにやったことのない業種の企業の紹介記事の和訳が来た。

 

私は、エンジンがかかるまで時間がかかるタイプで、訳し始めのうちは、ある単語を調べようと思って行き着いた先のサイトに出ている広告や別記事の案内が気になって、そっちを読んでしまったり、前から気になっていたことをふと調べたくなったりしてしまう。だから1日に訳せるだいたいの分量は把握しているけれど、正確には何ワードで何時間かかるのか計ったことがなかった。今回、ちょうどいい機会だと思い、あちこちネットサーフィンしたくなるのを我慢して集中して翻訳してみた。

 

まったく未知の分野の場合、用語の使い方のリサーチに時間がかかる。なぜなら辞書に載っている訳語が業界用語として正しいとは限らないからだ。だから同じ業種の日本の会社のサイトを見て、業界特有の用語の使い方を調べる。

 

用語集を載せている会社もあるが、日英対訳で作っているところはなかなかないので、用語集の説明を読み、原文で使われている用語を英語のサイトでも調べ、同じものを指しているかを確認する。

 

そして、業界用語というのは、単語自体は正しい単語であっても文脈の中で正しく使えているかどうか、その業界で仕事をしたことのない人間には判断できないこともある。だからできるだけ多く、その業界の企業のサイトを斜め読みして、文章の雰囲気を掴もうとする。これも楽しい作業だけど、時間がかかる。

 

さらに面倒なのは、その企業が過去に使ってきた訳語を踏襲しなければならない場合だ。今回は、そうせよ、という指示はなかったが、これまでに使われてきた用語を確認するのは常識なので、ひと通り現行サイトをチェックした。

 

そんなこんなで、今回の翻訳にかかった時間は、仕上がり約1000字で4時間。リサーチは突き詰めようと思うときりがないので、若干手は抜いたつもりだけど、それでも原稿用紙2枚半でこれだけかかってしまった。得意分野をいくつか持たないとなー、と切実に思った今回の翻訳だった。

 

 

「紡ぐ人」と「奏でる人」

自宅以外のPCをいじっているとき、ふと思いついて、このブログのタイトルを検索してみた。で、「なるほど~」と思わず唸ってしまった記事に遭遇。 

honeysuckle.hatenablog.jp

私はまさに「紡ぐ人」だ。このブログのタイトルも、翻訳に限らず、文章を書いている時の私の実感からつけたもの。 

ただ、「紡ぐ」ではきれいすぎるような気もする。実際には「鶴の恩返し」の鶴が自分の羽を抜いて織り込んでいくような、あるいはなくなりかけた歯磨きのチューブから無理やり歯磨きを絞り出すような、実に苦しい、修行のような作業だ。

1つの単語をめぐって、「本当にこの訳語でいいのか」「類語の○○とはどう違うのか」「原語のこのニュアンスがこの単語には含まれていないから、辞書にはこの訳語が載っているけど、これは使えない」などなど、ネットで調べて調べて調べまくって、ようやく訳語を決定するというようなプロセスが延々と続く。

このブログを書き始めたのも、文章をサラサラと「奏でる人」になりたくて、トレーニングを兼ねたブログのつもりだったのに、やはりというかなんというか、書きかけで下書きのまま保存された記事だけが増えていき、いつの間にか開くことすらなくなっていた。

紡ぐタイプでも奏でるタイプでも、「どっちが正しいというのではありません」と言ってくれるこの記事に出会ったのも何かの暗示かな、と思い、また書き始めたのがこの記事。それでも、書き始めてから2週間以上経ってしまった。

このブロガーさん、「紡ぐタイプの人が思いつきでサササッとブログを書いてみたらどんなふうになるのかもちょっと興味あるなぁ」とも書いているけど、いや、紡ぐタイプには「思いつきでサササッと」なんて、絶対無理ですって!

現在形と過去形

遅ればせながら、Let it goにはまっている。

サビのLet it go~, let it go~の部分は耳にタコができるくらい聞いているから、つい口をついて出てくるのに、その続きが歌えなくてフラストレーションを感じていた。この際だから、フルで歌えるようになれたらいいなと、歌詞つきのYou tubeを見ながら練習を始めた次第。

で、ふと気がついたのだけれど、決め台詞のような最後の部分の歌詞は1コーラス目も2コーラス目も、

The cold never bothered me anyway

と動詞が過去形になっている。

けれど、Idina Menzelの歌を聞いていると、1コーラス目は確かに過去形だけど、2コーラス目は、

The cold never bother me anyway

と-dの音が入っていないように聞える。

歌詞の内容から考えても、1コーラス目はエルサが自分を押し殺して生きてきた過去のことを歌っているから過去形が自然だし、2コーラス目は「ありのままの自分を見せる」と決意して、氷に閉ざされた世界で雪の女王として生きている「今」のことを歌っているのだから現在形がふさわしいはず。

・・・と思うんだけど、どの歌詞サイトを見ても、どちらもbotheredと過去形になっている。

決め台詞的な歌詞だから1コーラス目も2コーラス目も同じにするのが普通なのかもしれないけど、ストーリーの流れやこのときのエルサの表情を見れば、現在形でなければならないような気がするんだよねー。

どなたか検証してくれないかしら?

【追記】

一晩寝て目が覚めて、ハッと気がついた。

2コーラス目のbotherが現在形なら、主語がThe coldなんだからbothersじゃないとダメじゃん!

確かに-sの音は聞こえないしなー。やっぱりbotheredなのかなぁ。でも、歌詞では、文法的にはdoesn'tであるべきところをdon'tにしちゃったりすることもあるから、botherの可能性も捨てきれないと思うんだけど。

あ~、英語ってむずかしい!

リピート発注が来た

以前、「翻訳者の寿命」という記事で書いた、馴染みの翻訳会社の新しいコーディネーターさん。相性悪そうだから、今度の発注は断ろうかな、と思ったのだけれど、実は、前回の作業の途中からなんとなく向こうの態度が軟化してきた。

向こうが「おかしい」と指摘してきたことを、「こういう理由でこういう訳にしたんですよ」と説明したところ、調べ直してみたらこちらの言うとおりだったということがわかったからのようだ。「おっしゃる通りでした。申し訳ありません」と謝ってきて、それ以降、私の訳や指摘を信頼してくれるようになった(ような気がする)。

納品した訳もクライアントに気に入ってもらえたらしく、「本当にありがとうございました」と書かれた納品後のメールには、最初の頃のメールから感じたきつーい感じがきれいに消えていた。

今日、同じクライアントからのリピート発注が来たとのことで、「ぜひつむぎさんにお願いしたいと思いまして……」と連絡をいただいた。そう言われては断るわけにはいかない。ありがたい話だ。

前回ぶち切れて「あんたの仕事は2度と引き受けない!」などと叫ばなくて本当によかった、人間、辛抱が肝心だな、と思った次第。

聞き流すだけじゃ しゃべれるようにならない

先日も書いたが、パリに行くことになったので、フランス語のにわか勉強を始めた。以前から母と妹がパリ行きを目指してフランス語の勉強をしていたらしく、パリに行くことになったと知らせたら、持っていたフランス語の教材をいろいろと貸してくれた。その中にあったのが「聞き流すだけでしゃべれるようになる」といわれる某社の音声教材。

この教材が登場した頃から「聞き流すだけでしゃべれるようになんかなるわけない」と疑問には思っていたけど、最近盛んに流れるようになったTVコマーシャルでは、若きプロゴルファーもお土産屋さんのおばちゃんもそこそこの英語をしゃべっているので、英語なら日本人の場合、中・高で6年ぐらい勉強した下地があるから、しゃべれるようにならないこともないのかなぁ、と思い始めたところだった。

そこでタイミングよく、ほぼ知識ゼロの状態でフランス語版に挑戦することになった。これで旅行で困らないくらいしゃべれるようになれれば、おおいに宣伝して差し上げようと思ったが、最初の数分聞いただけで「こりゃダメだ」と思った。

まずスタートすると音楽が流れてくる。ゆったりとしたクラシックだが、そっちに気をとられて言語に集中できない。

そして、1つのセンテンスが長すぎる。付録のテキストの目次を見ると、日本人夫婦がフランス人の家庭にホームステイさせてもらうという筋書きでレッスンが進んでいくのだが、その状況説明がテキストでは4行もあるのに、それを一気に読み上げる。

フランス語と日本語の順番もよくない。フランス語が先に流れ、あとから日本語を聞いて「ああ、そういう意味か。そういうときはなんて言うのかしら?」と思っても、すでにフランス語は聞き流した後。ちっとも覚えられないのである。

そもそも、広告に「赤ちゃんは机で勉強しないで耳で言葉を覚える」なんて書いてあるが、言語の習得には臨界期がある、というのは言語学の常識だ。日本語OSがインストールされてしまっている大人がいくら外国語のシャワーを浴びても、それだけでは話せるようにはならない。

それに「しゃべる」という行為には、口周辺の筋トレが重要だ。使ったことのない単語は、最初はゆっくり、一音一音はっきり発音してみて、口にその動きを覚えさせなければならない。そういう意味でも、聞き流すだけでしゃべれるようになれるわけなんてないのだ!

というわけで、フランス語は早々にあきらめて、最近は国際会議で使う英語の本を購入し、音声をICレコーダーに録音して通勤時に車の中で聞きながら口の筋トレをしております。