ことばを紡ぐ

翻訳中に出逢ったことばたちについての覚え書き的なもの

放射性物質

放射性物質」をweblioで引くと、radioactive substanceが一番最初に出てくる。それで私もその訳語を使っていたのだが、英訳をチェックしてもらったその道の専門家から「専門家はこの単語は使わない」と指摘を受けた。学術論文などではほぼ常にradionuclideを使うとのこと。

radionuclideを辞書で引くと「放射性核種」という訳語がついている。ただ、日本語の「放射性核種」が専門的すぎるように、英語のradionuclideも一般向けの文章に使うには硬いような気がしたので、「一般向けの文書ではradionuclideはちょっと硬すぎるような気がするんだけど」と聞いたところ、「そういう場合はradioactive matterを使うとよい」と教えてくれた。

substanceを使ってしまうと、放射性ヨウ素とかセシウム137とかの特定の物質をイメージしてしまう、というのだ。確かに日本語で「放射性物質」というときは集合名詞的というか不可算名詞的に「放射性物質全般」」という意味で使っていることが多い。matterは不可算名詞だから、まさにピッタリ。

そのほか、その専門家には確認しなかったが、radioactive materialという訳語もある。materialも可算名詞なので、おそらく聞いた人が受けるニュアンスとしてはsubstanceと同じように特定の物質をイメージするのではないかと思う。