ことばを紡ぐ

翻訳中に出逢ったことばたちについての覚え書き的なもの

未知の分野の翻訳にかかる時間

これまでにやったことのない業種の企業の紹介記事の和訳が来た。

 

私は、エンジンがかかるまで時間がかかるタイプで、訳し始めのうちは、ある単語を調べようと思って行き着いた先のサイトに出ている広告や別記事の案内が気になって、そっちを読んでしまったり、前から気になっていたことをふと調べたくなったりしてしまう。だから1日に訳せるだいたいの分量は把握しているけれど、正確には何ワードで何時間かかるのか計ったことがなかった。今回、ちょうどいい機会だと思い、あちこちネットサーフィンしたくなるのを我慢して集中して翻訳してみた。

 

まったく未知の分野の場合、用語の使い方のリサーチに時間がかかる。なぜなら辞書に載っている訳語が業界用語として正しいとは限らないからだ。だから同じ業種の日本の会社のサイトを見て、業界特有の用語の使い方を調べる。

 

用語集を載せている会社もあるが、日英対訳で作っているところはなかなかないので、用語集の説明を読み、原文で使われている用語を英語のサイトでも調べ、同じものを指しているかを確認する。

 

そして、業界用語というのは、単語自体は正しい単語であっても文脈の中で正しく使えているかどうか、その業界で仕事をしたことのない人間には判断できないこともある。だからできるだけ多く、その業界の企業のサイトを斜め読みして、文章の雰囲気を掴もうとする。これも楽しい作業だけど、時間がかかる。

 

さらに面倒なのは、その企業が過去に使ってきた訳語を踏襲しなければならない場合だ。今回は、そうせよ、という指示はなかったが、これまでに使われてきた用語を確認するのは常識なので、ひと通り現行サイトをチェックした。

 

そんなこんなで、今回の翻訳にかかった時間は、仕上がり約1000字で4時間。リサーチは突き詰めようと思うときりがないので、若干手は抜いたつもりだけど、それでも原稿用紙2枚半でこれだけかかってしまった。得意分野をいくつか持たないとなー、と切実に思った今回の翻訳だった。