外国語の発音がわからないとき
フランスで開かれる会議に参加することになった。初めての海外出張&初めてのヨーロッパ。会議は英語なので、勉強する意味もないのだが、やはり現地のことばは勉強しておいて損はない(1日ぐらい観光の時間が取れそうだし)。
ということで、フランス語のにわか勉強を始めた。スペイン語は大学で1年だったか2年だったか勉強したので、ロマンス語系の文法はなんとなくわかるが、とにかくフランス語は発音がむずかしい!
それに、ネット上の「旅行フランス語会話」みたいなサイトに載っている例文は「私」が主語になっている文が多いが、今回の出張は複数人数で行くので「私たちは~」という場面があるのを見越して「私たち」を主語にした文を覚えたいのになかなかいいサイトが見つからない。
こうなったら自分で動詞の一人称複数形を調べて例文を作るしかないと思って、いろいろと検索していたら、便利なサイトを2つ見つけた。
知っている活用形を入力すると、原形と1~3人称単数&複数の主語に対応した活用形の一覧表が出てくる。そこでnous(私たちは)の欄にある動詞を見つけることができる。
活用形がわかったら、以下のサイトで発音を確認する。
単語の意味などは出ないけど、発音を確認するにはとっても便利。フランス語以外にもいろんな言語の発音を教えてくれる。
ためしに日本語で「こんにちは」と入力してみたら、Misakiさんという女性の声でちゃんと「こんにちは」と発音してくれた。
実際に使う場面があるかどうかわからないけど、久しぶりに新しい外国語を勉強し始めて、とても楽しい寝る前のひとときを過ごしている今日この頃なのであった。
翻訳者の寿命
20年近いつきあいのある翻訳会社の新しいコーディネーターから初めての仕事をいただいた。とある外資系企業の日本語サイトを請け負うためのトライアルだという。人材を募集するサイトなので、単純な翻訳ではなく、英語の原文を基にしたコピーライティングっぽい翻訳という注文だった。
元の英語自体がまったくキャッチーでもコピーっぽくもなく、普通の名詞フレーズだったので、かえって難しくて悩んでしまったが、直訳すぎず原文から離れすぎずというレベルの訳を書いて納品した。
もちろん大絶賛されるとは思わなかったが、思いもよらなかったダメ出しが返ってきた。使った単語の1つが「古めしい」というのだ。「表現が普通すぎる」というダメ出しはありえる、とは思ったが、まさか「古めかしい」と言われるとは!
私の感覚では、今でも普通に使う単語だと思っていたので、不意打ちを食らった感じだし、なんとも言えない屈辱感というかショックというかで、ずどーんと落ち込んでしまった。
メールでしかやりとりしていないので、そのコーディネーターの正確な年齢はわからないが、おそらく20代後半か30代で、私よりも一回り以上年下ということになる。
言葉のセンスというか翻訳の好き嫌いは本当にさまざまなので、どうダメ出しされても焦ったり気分を害したりすることはないが、この年代の人がクライアントになって、私の翻訳が気に入らないということは、もう翻訳者としては寿命なのかな、という思いがチラッと頭の隅をよぎった。
その後提出した第2案もあまり気に入らなかったようで、本人が考えたという別案を提出したという。それを見ると、今度は逆に「私はこういう表現はちょっと抵抗あるな」という訳になっていた。彼女と私とでは本当に言葉のセンスが違うんだろうと思う。次の仕事は断ろうかな。
identify
今日、英語とか翻訳とはまったく関係のない部署のプレゼンに参加した。パワーポイントに書かれた日本語の文章を見ていて、「あっ!」と思った単語がコレ。
洗い出し
これは、難訳語の1つ、identifyの訳にピッタリではないか! identifyは動詞なので「洗い出す」か「洗い出しを行なう」となるが。
weblioやその他の辞書を引いても、「同一視する」という原義に引きづられた訳語が多くて、「コレ!」と思える訳に出会えていなかった。目的語がproblems(問題)やneeds(ニーズ)などであれば、まさにドンピシャリ!という感じ。
日本語を見ていて、英単語が思い浮かぶのって面白いなと思ったし、英語が元になっている文章はどんなにうまく訳せていても、英語に引きずられた表現になりがちだから、日本人が日本人に読ませるために書いた、自然かつ格調高い日本語をもっともっと読まなければとも思った。
2016.10.26追記
現在、請け負っている和訳案件にもidentifyが登場。今回は、identify with XXXX's missionという形で使われていた。これはもう明らかに、
〜に共感する・賛同する
だろう。 『アメリカ人が選んだ英会話フレーズ』というブログにも、I can identify with XXXXというフレーズとして解説されていた。
mobilize
今、持続可能な開発に関する国際機関の報告書を和訳しているのだが、mobilizeという動詞が何回も出てくる。持続可能な開発をしていくための「目標」だとか「枠組み」だとかを主語にして、政府をmobilizeする必要があるだとか、世界をmobilizeすべきだとかいう文脈。
辞書に載っている「動員する」とか「結集する」という訳語でなんとかお茶を濁せる文もあるんだけど、実際に人だの知識だのが集まってくるイメージじゃない文もある。
出てくるたびにweblioを引いて、英辞郎を引いて、英英辞書のDictionary.comを引いて、googleで検索してみて・・・とのたうち回っているのだけど、どうしてもコレ!という訳語が見つからないでいた。
それが今日、The agenda must mobilize governments as well as business and civil societyという文を訳していたときに、思わず閃いたのです!
~に行動を求める
うん、いいかも。少なくとも、今、訳している文書で出てくるmobilizeの訳し方としては結構使える。あ~なんか、すっきりした! 便○が直ったような気分。
「外来語」言い換え提案
かつて難訳語の1つだったcommitだが、最近は「コミットする」という日本語がだいぶ市民権を得てきたので、文書の種類によってはその訳を使えるようになった。
でも、今回のはちょっとお硬い文書で、主語がpublic sector(公共セクター)、コミットするのがgood governance(グッド・ガバナンス)だったので、「人間の熱い思い」を感じさせる「コミットする」という訳は使いたくなかった。
辞書に載っている訳もどれもピンと来ず、延々とgoogle検索をしていたところ、見つけたのがこのサイト。
ここで提案されていた言い換えは「かかわる」と「確約する」。う~ん、やっぱりこの主語と目的語にはそぐわない。「意味説明」のところで、
1.責任を持って深くかかわること
2.責任ある関与を明言し約束すること
とあったので、ちょっとcommitが持つ熱が削がれてしまうけれども、あっさりと「責任を果たす」と訳すことにした。
上記のサイトはPDFだったが、ここに取り上げられている単語の索引がweblioに載っていたのを発見。
ここで提案されている言い換えはそのまま使えなくても、意味説明とか用例を参考に最もニュアンスの近い訳語を探り当てたいと思う。
言語愛
今日、職場である単語を検索していたら、Rubyというプログラミング言語を開発したまつもとゆきひろさんの記事に行き着いた。
ITとかプログラミングとか全然わからないし、興味もないんだけど、
「『言語愛』がない言語には魅力を感じない」
っていうことばにものすごく共感したのでメモ。
私も「言語愛」に満ちた翻訳ができるようにガンバリマス!